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R2R ラダーDACとは何か:PS Audioのポールさんの説明

PCオーディオ

R2R ラダーDACとは何か:PS Audioのポールさんの説明

最近R2R方式と呼ばれるDACが多数発売されています。
音質もアナログ的だと言われていて評判も良いです。

最近発売されたFiioのK13 R2Rは価格帯を大きく超えたパフォーマンスだと
海外で話題になっています。


R2Rについて知りたかったので、いくつか動画を訳してみました。
ただこの動画のポールさんはDSDがお好きなようです。

R2R ラダーDAC

バージニア州グレンアレンのフィルさんから手紙をいただきました。彼はこう書いています。

「ポール、最近R2R DACが市場にあふれているという記事や動画を見ました。これらは過去に使われていたものだと思いますが、あなたのDACはこの技術を採用していないようですね。これらのDACとは何なのか、そしてなぜ今“ホット”な存在になっているのか教えてもらえますか?単に新しい流行なのか、それともこの設計を使う正当な理由があるのでしょうか?」

なるほど。R2R DACというのは、私たちが最初に使っていた技術です。90年代に私がPS Audioを売却し、スティーブ・ジェフリーとランディ・パットンがテリーと私から買い取った後、彼らは「ウルトラリンク」というDACを作り始めました。これはウルトラアナログ社のR2R技術に基づいたDACでした。

基本的には「抵抗ラダー」と呼ばれる仕組みです(後で説明します)。ウルトラリンクは当時の最高レベルのDACのひとつで、ほぼ20ビットの性能を実現できました。当時の標準は16ビットでしたから、それは大きな進歩でした。R2R DACは16ビットを非常にうまく扱えます。現代の技術を駆使すれば18ビット程度までは可能ですが、ウルトラアナログのような特別な工夫を用いれば理論上20ビットに届きます。ただし24ビットや32ビットは実現できません。

PCM(パルス符号変調)の仕組みを簡単に言うと、例えば16ビットのデータが入力されると、それはシフト抵抗器に読み込まれます。データの「ワード」は、電圧レベルを表しています。2進数の組み合わせによって電圧の値が決まるのです。つまり、16個のオン/オフスイッチに精密な抵抗器が接続され、それが階段(ラダー)のように並んでいます。スイッチがオンになると電流が流れ、その合計で電圧が決まります。その電圧の変化が最終的に音楽信号になるのです。

ただし、この方式は非常に難しい。抵抗の精度は0.001%のレベルで揃わなければならず、電流の変化にも揃って反応しないといけません。ビット数が増えるほど必要な精度が上がり、現代の製造技術でも限界があります。

そこで登場するのが「シグマデルタ変調(ΣΔ)」です。これは現代のDACが採用している方式で、実はDSDでも使われています。シグマデルタ変調では1ビットや2ビット、あるいは数ビットの信号を高速に処理し、それを後でPCMに変換します。私の考えでは、これが「なぜDSDがPCMより良い音に聞こえるのか」という理由のひとつです。PCM DACでも一度はDSDのような処理を経てからPCMに変換されますが、DSD DACではその変換をスキップできるからです。

さて、質問の「R2R DACは価値があるのか?」について。もし魔法の杖を振って完璧なDACを作れるなら、私は32ビット対応のR2R DACを選ぶでしょう。実現可能なら最高に良い音のDACになるはずです。ですが現実的には不可能で、少なくとも24ビットは必要です。

ということで、少し長くなりましたがご質問ありがとうございました。また明日お会いしましょう。

ラダーDAC VS その他

コネチカット州ギルフォードのジムさんから手紙をいただきました。彼はこう書いています。

「ポール、最近多くのDACが“ラダーDAC”と呼ばれる方式を使っていますね。そしてDCS社は“リングDAC”というものを採用しています。他にもいくつか種類があると聞きました。私は素晴らしいPS Audio DirectStream MK2 DACを所有していますが、これはどのクラスのDACに分類されるのでしょうか?」

なるほど。あなたのDACは「PDM DAC(パルス密度変調DAC)」と呼ばれるものです。つまりDSD方式ですね。

一方で、ラダーDACやリングDACはPCM(パルス符号変調)をベースにしたものです。

ラダーDACというのは、精密な抵抗を梯子(ラダー)の段のように並べたものです。多くの場合32段あり、それぞれの抵抗値は前の段の2倍になっています。たとえば100Ω、次が200Ω、その次が400Ω、800Ω…という具合です。入力された電圧に応じて、それぞれの抵抗をオン・オフし、組み合わせによって特定の電圧レベルを作り出します。そのレベルが音楽に応じて上下します。

これを高いサンプリングレートで繰り返すことでPCMの波形を再現します。たとえばCDなら1秒間に44,000回、ハイレゾなら192,000回といった具合です。これがラダーDACの基本原理であり、1980年代初頭に私たちが最初に作ったDACもこの方式でした。当時は16ビット限定でしたが、原理は同じです。

現代のDAC、少なくとも私たちの製品は、そこから大きく進化しています。もちろんラダーDACも素晴らしい音を出すものがありますが、DirectStreamは「PDM DAC」、つまりDSDを用いた方式です。これはずっと高いサンプリングレートで動作します。

たとえばCDが44.1kHz(毎秒44,000回)なのに対して、DirectStreamは約11MHz(毎秒1,100万回)で動作します。さらに新しい「PS Audio Signature DAC」はその2倍、22MHz(毎秒2,200万回)です。だから「512」という名前がついています。CDの512倍の速度という意味です。DirectStreamはその半分、つまり256倍です。

PDM DACは非常にアナログ的です。おそらくこれ以上にアナログらしいDACは存在しないでしょう。ラダーDACもアプローチとしては素晴らしく、良い音を出すことができますが、根本的に違います。

ラダーDACは「階段状の小さな電圧の塊」を高速で積み重ねる方式です。一方でPDM DACは膨大な速度で「オン」と「オフ」の密度を変化させて信号を表現します。オンが多ければ電圧は高くなり、オフが多ければ低くなる。その信号をシンプルなローパスフィルター(コンデンサと抵抗、少しの回路)に通すだけで音声が得られます。

つまり、ラダーDACのように複雑な階段を経る必要はなく、ダイレクトに出力されるのです。これ以上にアナログらしい方式はありません。

参考になれば幸いです。ありがとう。

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